
「これから これから いまからさよなら」というメッセージから始まる、別れをテーマに描かれたクリープ王道の疾走感とエモーションが同居するバンドサウンドが印象的な楽曲。
意味深な上に聴く側がつい心境を重ねてしまうクリープハイプならではの絶妙な描写が冴え渡る。
曲の構想自体は昨年末に出来上がったとのことで、まさに激動の2014年に向かう寸前の「平和だけど不安な感じがしていた」(尾崎)という当時の心境も滲み出ている。
今年7月にリリースされたシングル曲。
楽曲自体は武道館前後に作られたとのことで、レーベル移籍騒動を経て武道館2DAYSを大成功させるも、現状に満足することのできないモヤモヤした気持ちを、「エロ」というタイトルから膨らましたユーモアあふれる1曲。
高揚感と虚無感を交錯させて盛り上げられるセンスは唯一無二。
気鋭の俳優、落合モトキと中村映里子が演じる“エロ”なミュージックビデオも話題となった。
キャリアの中での名曲を新たな形で聴くことが出来るのはクリープハイプのアルバムの一つの楽しみでもある。
「拝啓、君に伝えなくちゃいけない言葉を書き留めてく」からはじまる本曲「ボーイズENDガールズ」は、2009年10月リリースの限定シングル「mikita.e.p」に収録され、バンドとしてもいつか再収録したかったという思い入れの強い1曲。
今作では蔦谷好位置がプロデュースを担当し新たな風を吹き込んでいる。
最新の楽曲と並んでも輝き続けるポテンシャルの高さに尾崎はこう言う。
「ソングライターとして当時からちゃんとやれていたんだなということが再認識できた」
収録曲が発表された際にファンから歓喜の声が多数上がったことからもこの楽曲の支持率の高さが伺える。
2014年型クリープハイプの表現力の高さが体感できる仕上がりだ。
尾崎が読んでいた漫画からインスパイアされた楽曲。
モダンなアレンジ、クリープとしては斬新なリズムとグルーヴが新境地を感じさせる。
歌詞も日常や身近な物をモチーフに表現されることが多いクリープにしては珍しく、言葉遊びも交えつつ深読みさせられるメッセージが込められており、尾崎の表現力の進化が表れている。この曲から5曲目「大丈夫」の流れがリスナーにどのように受け止められるか、アルバム全体を通しての遊び心と懐の深さが表現されているこのセクションの意味合いは大きい。
昨年10月3日に下北沢デイジーバーで行われた「尾崎世界観の日」でも実は披露されていた曲で、仮タイトルは「演歌」という絶妙なネーミング。
当時の弾き語りバージョンの雰囲気を踏襲しつつ、バンドアレンジを施した事でより個性的な和製ブルース感を醸し出したフックのある楽曲に仕上がっている。歌詞は尾崎が得意とする「自分が言ってほしいことを曲の主人公に託す」という手法で描かれており、人間味あふれる彼らしい表現が溢れている。
アルバムタイトルはこの歌詞の1フレーズから引用されたもので、その点からもこの曲が今作において重要な位置を占めていると言えるだろう。
先日、第27回東京国際映画祭スプラッシュ部門作品賞を受賞し注目を集めている、安藤サクラ主演映画「百円の恋」主題歌として書き下ろされた11月リリースのリードシングル。
「映画に負けない曲を作りたい」という想いのもと、“痛い”“居たい”という怒涛のリフレインがインパクト大、日常で感じる当たり前の事をここまで染み渡る表現で投げつけてくる尾崎のメッセージセンスにも脱帽だ。イントロからラストまで、ライブでの大きな盛り上がりを予感させるエグい疾走感と共に、クリープハイプの真骨頂が凝縮された新たな代表曲が誕生したといえるだろう。
「この曲を作ることが出来たから、これからもやっていけると思った。」
そう尾崎が語る、今作のハイライト。レーベル移籍にまつわる様々なことが起きた直後の日本武道館2DAYSで見た景色、支えてくれるファンの想いを改めて信じることが出来たという気持ちが素直に表れた、聴くものを優しく包み込む1曲。
尾崎のソングライターとしての成長を感じさせる温もりあるメロディーも秀逸。
「明日も当たり前が続いていきますように 願ってます」という歌詞は、激動の2014年を過ごした彼らの心の声なのだろう。
アルバムでは恒例となっているBa.長谷川カオナシがリードボーカルを担当する楽曲。
この曲は5曲目「大丈夫」同様昨年10月に行われた「尾崎世界観の日」にカオナシソロとして出演した際に披露され、尾崎がそれを聴き、ぜひアルバムに入れようと提案したとのこと。
独特の哀愁漂う声と佇まいで奏でられるこの曲は童謡にも似た普遍感を感じさせつつも、歌詞表現には独特の毒も盛り込まれ、まさに長谷川カオナシという男を体現したかのような手触り。クリープハイプというバンドの魅力の幅をより広げる存在としてアルバム内でも輝きを放っている。
今年5月にリリースされたレーベル移籍第1弾シングル。
その影響もあるのか、テーマは「別れ」。
誰にでも経験がある、とある1日のシチュエーションを男性目線と女性目線で描き、様々な想いや感情を「寝癖」というキーワードを軸に表現する尾崎の歌詞センスに圧倒させられる。
勢いも切なさも感じられる強いメロディーとバンドサウンドがその歌詞世界と相まって、聴けば聴くほど新たな発見と解釈が生まれてしまう“噛めば噛むほど味が出る”このハイポテンシャルな楽曲が今年制作された初めての曲ということを考えると、2014年は紆余曲折ありながらもバンドとしては更なる成長期に突入し、傑作とも言えるこのアルバムが誕生したことも頷ける。
まずこの曲タイトルが凄い。直球でもあり変化球でもある、聴く側をワクワクさせる日本語感覚、これこそが尾崎世界観である。
アルバムを制作する過程で「もっと“攻め”の曲が欲しい」というアイデアから誕生したこの曲は、自分自身やあらゆる周辺の出来事に“噛み付いていく”メッセージが盛り込まれている。
尾崎曰く「噛み付くというよりも、甘噛みです(笑)」とのことだが、この切れ味の鋭さはクリープハイプの魅力の一つでもある“攻撃性”の高さはもちろん、“別に興味もないぜ”という余裕すら感じることができる、ライブでも盛り上がること必至のロックンロールナンバーに仕上がった。
都合によりタイトルなし。
アルバムのラストを飾るのは、夏に行われたホールツアーでも本編最後で披露されていた「二十九、三十」。
今年7月に「エロ」との両A面シングルとしてリリースされたこの曲は、フリーマガジン「R25」から生まれた30オトコを応援するプロジェクトチーム“THINK30”からの熱烈オファーで書き下ろされた。
今年30歳を迎えた尾崎が描く“生きるということにおいての葛藤”は、バンドとして下積み時代を長く過ごしてきた彼の沁みる表現のオンパレード。
尾崎曰く「今年は環境を変えてみたものの、良いことがない時期もあって“なんでこんななんだろう…”と落ち込んだこともあったけど、音楽をやめないのであれば、やるしかない。」という決意のもと、様々なことがあった激動の2014年を「全て受け止めてくれた大きいお皿みたいな曲」(尾崎)が完成した。